家路へ向かう人の列は、歩道を溢れ出して車道へ広がり、

交通整理のお巡りさんの吹く笛が、

あちこちから聞こえてくる。

蒸すような熱風と人いきれの中、

鼻緒ずれしかけた足を庇って歩いた。

遥か先まで続くテールランプの列に見とれていると、

早川が振り返る。


「コンビニ寄っていい?」

「うん…、あ!」

「何?」

「う、ううん。何でもない」


修ちゃんがバイトしてるコンビニどこだっけ?

あ、わかった!

この辺じゃない。

もっと、家から近いとこにある。



一瞬、わからなくなって焦った。

まさか修ちゃんが働いてるとこに、

早川と一緒に行くわけにはいかないもんね。

水着だって注意されたのに、今度は浴衣だし。

絶対後で何か言われそう。

信号の向こうに見えるコンビニを確認すると、

修ちゃんとは別の系列で、ほっと一安心。

店の入り口では、はっぴを着た店員さんが、

声を張り上げて、客を呼び込んでいた。

表に長机を並べただけのスペースで、

かき氷やポテト、アメリカンドッグなどが、

どんどん売れていく。


「わあ、まるでお祭りだね」

「完全に便乗してるな」

「言えてる。けど、買っちゃうんだよねー」


今ごろ、きっと修ちゃんも…。

似たような背格好の店員さんが、

店内をせわしなく走り回っていて、

それがそのまま修ちゃんと重なる。

私達は、クーラーがガンガンに効いている店内を進み、

自然とドリンクコーナーで立ち止まっていた。


「かりんちゃん?
かりんちゃんだよね?」


突然名前を呼ばれたと思ったら、

私達の間に割って入るように、

覗きこんできた顔を見て驚く。

浴衣姿のレイナさんだった。