「危なっ!何やってんだよ」

「そっちが避けるからっ!」


助けられたのも忘れて、思わず言い返すと、

早川の顔がすぐ目の前に、ホントに目の前にあって、

一瞬、息が止まるかと思った。

早川の顔、こんなに近くで見るの初めてだ。

頭のどこかでそんなこと思いながら、

身体は完全に固まってしまっていた。

それは、向こうも同じなのか、

何も言わないし、動かない。

どうしよう。

何か言わなきゃ。

なんでもいいから、早く。

そう思って、大きく息を吸い込んだ。

ドーン!


「きゃっ!」


思わず身をすくめるほど大きな音が響いた後、

パラパラと降る火の粉がお互いの顔半分を赤く照らし出す。


「は、花火!」


その音にきっかけをもらった私は、

なんとかそれだけ言って、上空を指さす。


「ああ、デカイの、あがったみたいだな」


早川はふっと笑って、


「落ちるなよ」


なんて、気を使ってくれながら、ゆっくり離れていく。

ギュっとしがみついていた腕が、すり抜けていくのを感じて、

ちょっと寂しいなんて感じてしまう私は、

どこまで自分勝手なんだろう。

抱えていた温もりと一緒に、安心感まで手放したみたいに、

とたんに不安になる自分に呆れた。