「こんなに近くで見るの初めてー!」

「スゴイねー、キレイだねぇ」

「わー!見た?今の見た?最後に、キラキラってなった!ねぇ!」


足をばたつかせて、子供のようにはしゃいでるのは私一人。

早川は何も言わずに空を見上げている。

噎せ返るような人ゴミから少し離れて、高いブロック塀の上に二人、

微妙な距離で並んで腰かけて。


「…早川って、いい人だね」


一段落した花火から目を離して声をかけると、

向こうもこっちを見ているのに、ドキっとさせられる。


「今頃気づいたか」

エラソーに言って、頭を小突いてくるのは、照れ隠しなのかな。


「元気づけようとしてくれたとか?」


その表情を確かめたくて、身体を傾けると


「聞くなよなー、いちいち!」


って、怒って向こうを向いてしまった。


「だって、聞かなきゃわかんないじゃん」


背中に向かって文句を言っても、


「うるせぇ。
ほら、また上がった」


もう前を向けと言うように、顎で空の方を指す。

二人で同じ空を見ながら、どうってことない話をして、

ただそれだけのことで、少しスッキリしていく気持ち。

ホントはこのモヤモヤ、何もかも話してしまえたら、

もっとラクなんだろうけど。