203号室で暮らそう

陽景くんは“そう”と頷くと、その空っぽになってしまったペットボトルを捨てに、キッチンへと向かった。




 
キンモクセイの香りが、どこからか漂ってくる。
 
甘くて優しい匂い。
 
そしてどこかしら、こころをくすぐる。
 
こんな街中のどこに、キンモクセイの花があるのだろう。
 
何気なしに私は辺りをキョロキョロとし、そしてそのまま視線は隣を歩く陽景くんへと向いた。
 
並んで歩くと、改めて思うけど――背、高いなあ。