203号室で暮らそう

「野菜、もうちょっと柔らかくした方がいいね。温め直すよ」
 
私はスープのお皿を手にし、キッチンへ行こうとした。

「ああ、いい、いい。俺がやるよ」
 
声が小さくなってしまった陽景くん。
 
あらら、落ち込んじゃった……。

「あー、でも、味つけは最高だよ、そのスープ」
 
うん、ただのコンソメスープなのに、どこか上品な感じがした。

「だろっ。香りだけは、同じだと思ったんだ」
 
急にテンションが上がって、にこにことしながらキッチンへ彼は向かった。
 
香りだけは、同じ――?
 
なにと?
 
私は首をひねりつつ、とりあえずお粥状態のお米を、ずるずるとすすった。