203号室で暮らそう

一緒に暮らしている、とまではさすがに言えなかった。

「へえ。カッコいーね。お名前はなんていうの? 私は柚実」
 
積極的な柚実が身を乗り出した。

「花堂陽景(はなどう・はるかげ)です」
 
彼は微笑んで答えた。 
 
陽景くんの名字なんて、今、初めて知ったよ。
 
私と会って、しばらくはまともに口を利かなかったのは、別に人見知りするとかじゃないんだ。
 
こうやって初対面の柚実たちを前ににこにこして、そして誘われるがまま、柚実の隣に座った。
 
まあ、人見知りとかだったら、見ず知らずの私のアパートに来るわけないし、そう何日も居座ったりしないか。