203号室で暮らそう

ああ、私、泣いてる……。
 
涙で、彼の顔が霞んで見えるんだ。

「ゆーか。ゆーか。どうした? 大丈夫か?」
 
陽景くんが珍しく慌てている。
 
私の名を連呼して、慌てている。
 
逆にそんな陽景くんに私は驚いて、涙はすぐに止まってしまったようだ。

「……」

「どうした?」
 
陽景くんは白いYシャツの袖で、私の目頭を拭ってくれる。
 
私の家の洗濯の香りがする。
 
私はそれに、何だか安らぎを得て、思わず笑みを零した。