203号室で暮らそう

とりあえず、手ブラでいる陽景くんがモグりだと知られないように、ノートとシャープペンを彼の前に置いた。
 
陽景くんは以外にも真剣に講義を聞き、板書を丁寧に写していた。
 
そして、90分の授業が終わると――席を立って教室を出ようとする陽景くんを制した。

「いや、ちょっと待って。あと5分くらい、ここにいよ」

「――?」
 
一番前の席に座るのも、講義が終わってからすぐに席を立たないのも、全て……。
 
全て、彼の姿を見たくない、から、という理由だった。
 
教職の講義では、いつもそうしてきた。
 
なのに――。