203号室で暮らそう

初めて会った日から、元気がないようでも、ちゃんと食事だけはしっかりとる。それはいいことだ。

「どうぞ」
 
ピザをキレイに8等分した後、彼におあずけ解除命令を下した。
 
表情はないけれど、微妙な顔つきで彼の喜びが伝わってくる。

――ぷっ。
 
私は思わず笑ってしまった。
 
不思議なひとだよなあ、陽景くんって。
 
年齢も住んでるところも解らないのに、何やってるひとかも知れないのに、言葉数だって少ないのに、全然、不信感を抱かせない。
 
思えば、見ず知らずの彼と、ここ数日寝食を共にしてるって、奇妙だよね。
 
だけども、会話らしい会話も、ほとんどないのに。
 
……何だか、楽しい。