203号室で暮らそう

「あ、まだこれ、切れてない。ローラーで切れ目入れるから、待って。それからおしぼりでちゃんと手、拭きなよ」
 
彼は手を引っ込め、私の言葉に従った。

「それにしても、ピザなんて久しぶりだなぁ。外食なんてのも久しぶり」
 
ぐーいぐいとピザを分けながら私は呟くと、陽景くんは小さく、そうか、と言った。

「自炊してるし。友だちとあんまり外で食べたりしないな。貧乏学生なんで。ああ、大学の学食とかでたまにラーメンとか食べたりするけどね」
 
そうか、と陽景くんはまた頷く。
 
目はピザに釘付け。
 
まるで、おあずけされている犬のよう。
 
陽景くん、食べること好きだもんな。