「あのー、大丈夫ですか?」
 
私はおずおずとそのお兄さんに声をかけた。

「――――」
 
彼は私の言葉に、うんともすんとも言わなかった。
 
ただ、うつろなその目でまばたきをしたので、ああ、このひとは生きているんだなって思った。

「あのー、日が暮れると、この辺虫が出ますよ。しげみが多いので、蚊に刺されます。それからもうすぐ、カラスの大群が来るんです、ここ。不吉なのであまり居座らない方が……」