203号室で暮らそう

ひゅううう――。
 
通る風が、パタパタと彼の白いシャツの裾を翻していく。
 
今日は風が強い。
 
雲が流れるのが早い。

「私、風の強い日って、好きなんです。何か、全てを浄化してくれているみたいで。ああ、今のこの夕暮れ時って風景が素敵ですよね。気分が落ち着きます」

「――」
 
彼は相変わらず無口だ。
 
まるで私は独り言を言っているかのような感じだ。
 
けれど、それはそれでよかった。
 
本当に独りだと、こんな言葉は口に出せないから。
 
本当の独り言は、傍から見たらおかしな奴だと思われる。