203号室で暮らそう

「あのね、日浦さん。今日、午後2時からタイムセールスやるのよ。豚コマ肉、ほんと安くするから、あなた買いだめしておいた方がいいわよ」
 
と、佐原さんが私にずい、と寄ってきて提言してくれる。
 
私はつまようじにささっていたしば漬けを手にして言った。

「ああ、今日は確かカレールウが118円なんです。安いでしょう? 
ひとり2箱までなんですが、買っていかれるお客、多いです。私も買って帰ろうと思っていたんです。お肉も安いのなら、今日の夕飯、カレーにします」

と、私の言葉におばちゃん2人は目を輝かせる。

「あら、それは買わないと」

「ひとり2箱までなのね? 仕事あがりに息子たちに来てもらおうかしら」
 
2人はやんややんやと騒ぎ出す。
 
ふふ、実家のお母さんを思い出すなぁ。
 
主婦ってみんなこうなのかな。
 
必要以上に声が高くて、明るくて、かしましいというか……。
 
お母さんってものは、少々煩い方がいいものなのかもしれない。
 
家族が活気づく。