203号室で暮らそう

ふたりきりになった私は、涙で霞む目で、陽景くんを見つめた。
 
一体、いつ以来になるだろう、こうしてふたりきりになれたのは。
 
少なくとも、私にとっては氷山が溶けてなくなるまでの時間に等しい。

「――そのパーカー、やっぱりよく似合うよ」

「……陽景くんが、くれたんだもん。当たり前だよ」

「白って、花嫁の色だよね」

「……え?」
 
彼はふっと笑うと、ボーイ服の袖で、私の涙を拭ってくれた。

「……ここ、陽景くんのお家のお店なの?」

「そうさ。親父がオーナー」