203号室で暮らそう

「お客様、どうされました?」
 
とめどなく溢れ来る涙を、私は流れるままにしていると、さっき席に通してくれた美人ウエイトレスさんが駆け寄ってきてくれた。

「ああ、麗華……じゃなくて、春日さん」
 
陽景くんが彼女に気づく。

「スタッフルームに連れて参りましょう。ご気分が悪いご様子ですので」
 
そしてそのまま、私は席を立ち、陽景くんとウエイトレスさんに奥の部屋へと連れて行かれた。

「じゃあ、私は戻りますわね、坊ちゃま」
 
彼女は去り際に、また私に笑顔をくれると、部屋を出て行った。
 
品のいいテーブルと、ロココ調の椅子が並べられてある、ちょっとした部屋だった。
 
その時はまだ、陽景くんが“坊ちゃま”なんて呼ばれていたのに、私は気づかないでいたのだけれども。