203号室で暮らそう

いつも私の前では、箱根Tシャツだとか、ただの……白いYシャツだとかの姿だったのに。
 
私が戸惑いを見せていると、彼は銀色のトレイを小脇に抱え「どうぞ、お召し上がりください」と長いまつげを伏せた。
 
私は、あらかじめ用意されていた、テーブルに並べられていたスプーンを手にした。
 
えっと、外側から使うんだよね。
 
そして、匙でスープをひとくち。
 
――あ……。
 
陽景くんが、以前、私の家でつくってくれたものと同じ味がする。
 
おいしい。
 
おいしくて、懐かしい。