203号室で暮らそう

高級そうなレストランなのに、どこかあたたかみをと素朴さを感じる。
 
ジーパン姿で肩身が狭いはずなのに、なんだか居心地はいいお店。
 
名前、なんだっけ。ハナドゥール。……ハナドゥール……花堂……。
 
花堂?
 
陽景くんの、苗字じゃない――?

「お待たせ致しました。当店自慢のコンソメスープでございます。
 
暗号が解けた私に、ボーイさんからふと声がかかった。

「あの、私……、何にも注文してな――……」
 
パッとボーイさんを見た。
 
黒のベスト、白いシャツ、黒のパンツ。
 
どうにも気高い、そのボーイさんは……陽景くん、だった。
 
彼は何も言わず、黄金色に輝くスープを私の目の前に置いてくれた。
 
なん……なんで陽景くんがボーイの格好をしているの?