砂漠で見える、オアシスの蜃気楼なんかじゃ、ないよね。
 
近くへ寄っても、幻は、消えないよね。
 
陽景くんも、私に気づいて、さっきからじっとこちらを見つめている。
 
お互い、きっと、同じことを思っている。
 
これは夢?
 
それとも、本当に、本当の、現実?
 
私たちは、雑踏に紛れて距離を置いたまま、しばらく牽制しあっていた。