203号室で暮らそう

その仕草はまるで機械的で、相変わらず無表情だったけれど。
 
こんなにも動く彼を見たのは、お昼に見かけて以来、初めてだ。
 
彼が食べている夕ご飯といっても、質素なおかず。
 
白米に、ほうれん草のお味噌汁に、ゴーヤ入りの玉子焼き、サンマの塩焼き、冷奴といったメニューだ。
 
ゼイタクなものはいらない。
 
ただ、栄養のあるものを食べるようにはしている。

「ゴーヤってクセありますよね。他の野菜に勝るとも劣らないこの苦味が」
 
単調に、まんべんなくおかずに箸をつけている彼に、私は話しかけた。
 
私も一口、ゴーヤの玉子焼きを……やっぱり苦い。

「だけど、栄養価たっぷりですよ。良薬口に苦し、ですよね」