「終わって、今帰ってきたとこ」
 
本当は、貧血おこして帰らされたんだけど、言えなかった。

『そう……』
 
そこで、沈黙が流れた。
 
いつもは多弁なお母さんなのに、変。
 
どこか、言いよどんでいるようだった。

「――」
 
私も何かを察して、しばらく口をつむんでいた。
 
お互い、相手の様子をうかがうような時間が流れていく。
 
すると、ややあって、電話口でのお母さんが、息を、ひとつ吐いた。
 
それをきっかけに、お母さんは話し出した。

『あのね、木綿花。うちのお店、もうだめなのよ』