203号室で暮らそう

お風呂のドアの前で、彼から腕を離し、独りで立たせた。
 
すると、ふらふらのお兄さんは、とん、と壁に肩をついた。
「あ、花火の当たった患部には、なるだけ冷たい水を当てるといいですよ」
 
私の言葉を聞いているんだかいないんだか、彼は相変わらず気の抜けた表情のままだ。
 
だけど、解る。
 
顔の造りは、はっきり言ってハンサム。
 
薄い眉、長い睫毛、高い鼻、形のよい小さな唇……。
 
まるで欧米の貴族のよう。
 
なんでこんなひとが、浮浪者みたいに公園にいたんだろう。