203号室で暮らそう

「おっ……と」
 
私は慌てて彼を抱きとめた。
 
ゆうに175㎝は超える身長なのに、私が支えられるほど軽い体だった。
 
私は彼の木の枝のような腕を自分の首に回すと、ふたりしてよたよたと歩き始めた。

「お兄さんは大丈夫だから、安心して。今度花火をやる時は、大人と一緒にするんだよ」
 
去り際に群がっていた子どもたちに声をかけ、その場を後にした。
 
とんだ野良猫を拾った、夏の夜――。
 
右へふらふら、左へふらふらとしながらも、何とかお兄さんを引き連れて、自宅アパートへとたどり着いた。

「まず、シャワーを浴びてきてください。その間、ご飯の準備しておきますから」
 
家は1Kのアパート。2階の203号室。6畳の部屋へと続く廊下に、トイレとお風呂がある。