203号室で暮らそう

彼は大きく頷くと、また私の口に、桃を運んでくれた。
 
陽景くんの言っていることは、よく理解できなかったけれど。
 
親鳥が雛にえさを与えるような行動に、喜びを感じているようなのは、伝わってくる。

「早く元気になれよ」

「うん」
 
ベッドの中で、私が素直に頷くと、陽景くんはそっと桃の小皿をテーブルに置いた。
 
そして、私のおでこに手をあてがった。

「あのさあ、ゆーか。ゆーか、よく“可愛い子に生まれたかった”って言うけど、ゆーかは充分、可愛いよ」