203号室で暮らそう

「雄くん、どうしたの? 次のお店、行きましょ」
 
小鳥のさえずりのような声がしたかと思うと、その声の持ち主は、すっと雄介の腕をその胸に抱いた。

「あら? お友だち?」
 
いがみ合っている雄輔と陽景くんを見て、状況も察しないまま、その彼女はにこりと笑った。
 
まるで、妖精のような、笑顔で。
 
やっぱり私、この子には、かなわないや――。

「いや……。何でもないんだ、行こう」
 
その、妖精のような可憐で儚げな彼女に向かってそう言うと、雄輔は、私の方は見ずに、立ち去ってしまった。
 
ああ――。