203号室で暮らそう

私はその言葉にハッとし、子どもが指差すベンチに駆け寄った。
 
昼間のお兄さんだった。
 
相変わらずぼけっと宙を見つめていた。
 
まだ、ここにいたのか……そんなことよりも。
 
花火が当たったとされる、彼の脇腹は、白いYシャツが焦げて穴が開いてしまっていた。
 
そこから覗く白い肌は、赤く腫れあがっている。

「救急車、呼んだ方がいい?」
 
ベンチを取り囲む子どものひとりが、私のシャツの裾を引っ張って不安そうな目で言ってくる。

「大丈夫よ。救急車は呼ばなくても平気よ」
 
私が微笑んでそう言うと、少年たちはホッとしたように、微かな笑みを浮かべた。

「お兄さん、お兄さん。手当て、しましょう。白くてキレイな肌なのに、痕(あと)、残っちゃいますよ」