夏の終わりに



「森川さんは?現実逃避とかしないの?」


「私は…本が私の現実です」


「本が…現実?」


「私はこの世界で生きるのに向いてないんだと思います」


「と言うと?」


「…人間なんて嫌いだし、関わるのもめんどくさいと思っているし、だから私は本の中で生きようと思ったんです」


「でも…本の中で生きているのは君じゃない
本の中の登場人物じゃないか」


佐伯はすかさず答えた


「登場人物に自分を投影してるんです」


「投影しても君は本の中の登場人物にはなれない」


「…そんなこと」


わかっていた


とっくの昔からわかっていた


こんなの逃げているだけだって


本の中で生きることなんてできない