「ま、ちょっとまってて!……っ」
慌てて追いかけようと立ち上がったとき
「伊都」
電話越しよりも
クリアに聞こえた私を呼ぶ声。
ベンチから離れた並木道に佇む依くんの姿を、私はすぐには受け入れられなかった。
「な、なんで、え、依くん?」
「なにこれ」
更に吹かれた風によって、依くんの足元にルーズリーフが届くように運ばれて。
「まって! それ見ちゃダメ!」
私は依くんに会えた嬉しさよりも、その紙を見られたくない一心で駆け寄る。
そんな叫び声に近い私のストップを悠々と無視して拾い上げる依くん。
仲直りが程遠くなりそうだぜ。

