「そんなの当たり前だと思ってる?」
すると私の納得いかない気持ちを察したのか、突然むぎゅっと両頬を片手で挟む依くん。
「そうだよ当たり前だよ。でもあの店では俺に媚び売る女が、そんな当たり前を怠ってたんだよ。
つーか伊都は分かりやすいから、なんとなく俺のこと好きでいてくれたの知ってた」
「ぇ、ちょ」
サラッと知ってたって言うけど、私驚愕なんだけど。
「でも伊都は俺よりも目の前のやるべき仕事を懸命にこなしてたよね。
たまに押し付けられるトイレ掃除もゴミ捨ても嫌がらずにやってたでしょ」
「……」
「見てたよ」
なんなの、なんなの依くん。
本当に吃驚して、声でないよ。
今口を開いたら、この空気を壊すようなはぐらし方しか出来なくて
ジッと私を注視する依くんを、なんとも言えない気持ちで見つめ返した。

