「緑ちゃん…言いなりが嫌なら僕から緑に言ってあげようか?」


「え…ううん、大丈夫だよ」

確かに言いなりは嫌だけど、


瞬くんに言ってもらうのはさすがに悪いよ。


「…昨日のあの電話だって」


「昨日…」


あ、あの悪魔があたしの携帯を勝手に…


「あの後心配だったよ」


「…ありがとう」


瞬くんはなんでそこまであたしにしてくれるのかな。


悪魔があたしに酷いから?


それであたしが可哀想だから?


でも瞬くんは天使だ…。


「このボール、さっさと片付けちゃおうか」


「え、瞬くん?」


瞬くんはバスケットボールをカゴの中にシュートする。


「実は僕、こう見えても前にバスケしてたんだ」


「そうなの!?」


全然見えない。


肌も綺麗で白いし、運動はだめタイプかと…。


「うん、まあ緑もしてたんだけどね」


「そうなんだ…」


意外…。


帰宅部って感じなのに!


学校終わってすぐ帰るみたいな!


「小学校のミニバスで僕達のマネージャーが今の半田先生だったんだ」


そう言って瞬くんはボールを投げ見事カゴに入れた。


「半田先生…」


そういえば昨日、吉田くんの家で見た写真…。


あの写真には、瞬くんと吉田くんと、半田先生が確かに載ってた。


「うん。まさかさくらが数学の先生になってるとは思わなかったよ。ずっと会ってなかったから」


さくら…


半田先生の名前かな。


「よし、終わった」


「あ、ありがと…」


なんだろう。


もっともっと、吉田くんと瞬くんの事を知りたい…。


「いえ。…あのさ、緑ちゃん」


「は、はい」


瞬くんは優しい目であたしを見てくる。


「抜け出さない?」


「え?」


その言葉の意味が分からなかった。


だけど瞬くんがあたしに手を差し伸べて


「行こう」


って言ったから、その意味が今分かった。


瞬くんはあたしの手を優しく握って走った。