目が覚めたら、消毒液の臭いが鼻についた。


一番初めに目に入ったのは、白い天井。



ここは……病院?



「ん……?」


「目を覚ましたのか、美咲!」


「うわああああ‼」



半覚醒状態のわたしに、がばっと抱きついてくる男。


最近はほとんど会話なんてしてなかったのに、この人は……。



「お父さん……わたし、助かったの?」



なんでだろう。


十年前の世界で、会っていたばかりなのに、ものすごく話すのが久しぶりな気がする。


それはきっと、わたしがかなりのあいだ、『十年後』の父の顔を見ていないからだろう。



「ああ……もう一か月も昏睡していたんだ……。


母さんと……お前まで亡くしたらどう生きていけばいいのかわからんじゃないか……。


心配したぞ、美咲」


「……うん。ごめん、お父さん」