「ご臨終です」



低い声で、医師がそう告げる。


力なくその場に座り込む父の姿も、わたしの目には入らない。



どうして。どうして、わたしはこの未来を変えられなかったのだろう。


どうしてわたしは、こんな過去に来なくてはならなかったのだろう。



ふっ、とわたしの脳裏に親友2人の顔が浮かんだ。


ショーちゃん、そして未緒。


わたしがここで得たものなんて、あなたたちくらいじゃない。


……そしてそれももう、失われようとしている。



「……お母さん」



息を引き取った母の手を、もう一度とり、わたしの頬にあてた。


まだ生きているときの、温かい熱を持っているはずの彼女の手。


でも、もうわたしは……その体温すら感じられない。