「いやあ、すまない。


人間という生き物はたいてい……まあ、死を覚悟していない者の話だが……、


死を受け入れがたくて取り乱すのだよ。しかし君は冷静に事を把握したな。


優秀で何よりだ」
 


別に今更褒められても嬉しくないんですけど。


というか、死んだのが悲しくないわけじゃない。


だって、わたしには家族もいるし、そして何より……。



……何より、あれ?



何が、あったんだっけ……?


わたし、何か大切なことを忘れてる……?



「どうした」


「いえ、何も……」


「そうか」



 天使は頷くと、わたしの手をとり立ち上がらせた。