麻里子は、放心状態に近い。

 真一は、声を低めた。

「とにかく、このことは絶対誰にも言うんじゃないぞ。

 何度も言うが、本当に目撃者は いなかったんだから、僕達さえ黙っていれば、絶対に大丈夫なんだ。

 麻里子、ときには心を鬼にすることだって必要なんだ。

 わかったかい?」

 麻里子が頷き、マンションに入ったのを見届け、真一は家まで車を走らせた。

 時刻は、三時前だった。