”あの”日。

 今月二回目となる真一の出張に伴(ともな)う密会を終え、真一が麻里子を送っている道中だった。

 深夜二時の道路は、ベットライトだけが頼りの暗闇だ。

 麻里子は助手席でからだを右に傾け、車に揺られながら、

 彼が左腕につけている、ロレックスの腕時計を見つめていた。