妻の菜々美(ななみ)は、真一が遅く帰宅すると、決まって嫌な顔をした。

 真一と菜々美には、小学三年生の娘と、中学一年生の息子がいた。

 二人とも、世間からはおぼっちゃまお嬢様学校と呼ばれる、私立のマンモス校に通わせている。

 菜々美は真一が帰宅してから、受験のことや色んなことで相談したかったが

 仕事の疲れで、真一にそのような気力は残されておらず、

 いつも菜々美を避けるように、食事を済ますと自室へ行くのであった。