隣の席は、ヤンキー君!



「あぁ俺ね」

茶髪君はニコって笑うとあたしのほうを向いた。


「一宮 海斗(いちみや かいと)、海でいいよ。
一応隣のクラス。

よろしくね」


…案外あっさり名乗ったので拍子抜けした。

逆ギレされるかと思ってたから。

いい人そう…ヤンキーっぽいけど。


「君は?」

「あ、えと、一条 愛です」

「愛ちゃんね。
よし、覚えた!」

そう言って笑う海君は人懐っこそうだ。


「…海」


ひっっっっくい声がした。

THE 怒りみたいな。


「おっと、どうやら俺はお邪魔っぽいね」

「…別にそうじゃねぇけど…」

「んや、帰るよ」


あたし達にヒラヒラ手をふると、そのまま背を向ける。

そのまま旧校舎から離れていった。


「――あっ!怪我!」


そうだった、ヤンキー君殴られたんだ!


「見せて!」

「ん?――っ」


唇の端が切れて少し血が出ていた。


「保健室!」

「い、いいってこんくらい!
舐めときゃ治るし!」


そう言ってあたしを引き剥がした。


「…ちょっと待って」

「あ?」

「えい!」


ペタ。


「!?」

「絆創膏くらいは貼らないと!」


ねって笑いかけたら、顔をそらされた。