「…あれ?」
いない。
あたしの隣の席は空っぽだった。
目につく金髪もなく、窓のそばにはただ机と椅子があるだけ。
他には何もない。
ただの机と椅子。
「…帰ってきてないんだ…」
落胆と同時に胸騒ぎがした。
ザワザワッて。
どうしてまだ帰ってきてないんだろう…。
「……」
「オイ一条~、席つけー」
先生の声がする。
でもどこか遠く感じて、自分のことなのに他人のことみたいな感覚だった。
そう、どうでもいい。
今はそんなこと、してる場合じゃない。
「一条?どうしたー?」
入口近くで突っ立ったままのあたしに、次第に教室がざわつき始める。
「先生!」
「お、おう?」
「お腹が痛いので早退します!」
「お、おう」
腹から名一杯声を出していったあたしに、先生は気圧されたみたいだ。
あたしは自分の席に走っていくと、鞄を取ってそのまま教室を出た。


