「は、はい。ついさっきあっちの方に行きましたよ」
「わかった」
「あ、あの!」
走り出そうとした俺に、亜美菜っていう女が呼び止めた。
見ると、瞳が不安そうだった。
「――守ってあげてください、愛を」
「!?」
まさかの言葉に一瞬動揺する。
「…愛、どこか自虐的なところがあると思うんです。
何て言うか、自分の危険に鈍感っていうか…」
「…そうか」
俺は短く返事をして走った。
自虐的。
その言葉はアイツにピッタリ収まった。
アイツはどこか、自分に無関心なところがある。
そのぶん周りには、ばかり目がいって…。
「…くそ」


