櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ






「動くな。少しでも動けば、分かるな?」



 ルミアとユウに両手をあげさせ、脅す。



 どうやら敵は背後に二人。



 ユウの方は体調が優れないこともあり、抵抗すらできないだろうがルミアは別だ。



「貴方たちは...」



「貴様らに名乗る名はない」



 あえて言うのであれば、



「我らは《オーディン》。死神だ」 







「...それが聞ければ十分よ」



 次の瞬間、ルミアは自分につきつけらた拳銃を抑えて背後の敵の顔面を一発、隣でユウに銃を向けていた敵の顔面に一発蹴りいれた。



 もちろん超圧縮された魔力を拳と脚にのせて最強の一発を。



 その結果二人の敵はそれぞれ吹っ飛び、周辺にあった大木や壁に体を打ち付けて完全に意識を手放した。



 ルミアの正体を知らないユウは唖然として、その一瞬の出来事を眺めていた。






 ルミアやジンノの一族《オルクス》も死神の意。



 だから思う。



「...死神を名乗るには、あまりにお粗末ね」



 きっと、この時のルミアの表情は教師のリリー・ホワイトではなく、特殊部隊の隊員で聖者オルクスの一族であるルミア・プリ―ストンだっただろう。



 左目の深い藍色の瞳が強く、強く、輝いていた。






「せ、先生......?」



 ユウの声で、ルミアは我に返る。



「あ、...ごめんユウ、怪我は?」



「いや...ない、けど...先生は?」



「私はいいの。無事で良かった」



 ルミアはほっと胸をなでおろし、まだ戸惑っているユウの頭を優しく撫でる。



「...先に行ってる皆の事が心配。第三校舎に行きたいの。できれば、貴方には私から離れていてほしくない」



 離れてしまうと守れない、とは言えないルミアは懇願するようにユウに頼む。



 ユウはひどく困惑し瞳は揺れていたが、ルミアの有無を言わせぬ力強い声に、ゆっくりと頷いた。



「そこの二人はさっき魔法をかけたからしばらく起きないわ。安心していきましょう」



「う、うん...」



 いつの間に魔法なんてかけたのかと突っ込みたそうだったが、状況が状況だ。



 ルミアはユウの手を握り、第三校舎へと急ぐ。






 その背後で、ルミアが密かに作ったおかっぱ頭の式神が第一校舎に向かって走り出していった。