櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ






 ユウの家庭は複雑で、生まれてこの方人に優しくしてもらった経験がなかった。



 おまけにここ数年は魔法も使えず、体調も悪くなる一方で扱いも酷くなるばかり。



 それはもう、異国に飛ばされる程度には。



 だからだろうか、



 出会ってから今まで、無条件に注いでくれる愛情にも似た彼女の優しさが、たまらなく愛おしくなった。





 けして敵わぬ恋だと自覚してる。



 なんどか気持ちを伝えようとしたこともあったが、相手にもしてもらえなかった。



 贈り物をしても無駄。



 どうせ学生の一時の気の迷いか戯言程度にしか認識していないのだろう。



 この人は他人の感情には敏感なくせに、自分の色恋沙汰となるととんと駄目になる。



 彼女に恋心を抱いてる男など学校内だけでも何十人といる。生徒、教師含めて。



 それに全く気付いてないのだから、自分の好意が伝わらないのも納得だ。



だから今は、すこしでも長く生きて、彼女の生徒であり続けたい。





「体調は?少しは良くなった?」



「...うん。ここに来ると何故か良くなる」



「ここは保健室だもの。特別な魔法があるのよ」



「はいはい。それより、つぎ第三校舎で祈りの授業だろ。行かなくていいの」



「っは!!!そうだった!!!行かなきゃッ......って貴方もでしょ!一応は私のクラスの生徒なんだから!!」



 ただ今、ユウは光属性クラスの生徒という事になっている。



 極稀にいる魔法が使えない生徒は、ユウのようにクラス配属ができない。



 昔からそういう生徒は自動的にその生徒は光クラス預かりになるのだ。



「...ッはは、そうだったっけ」



「そうよ!!」



 つまりユウは生徒で、ルミアは担任と言うわけ。



ルミアは下手くそな笑みを浮かべるユウを困ったように微笑みながら見つる。



(やっと、ここまで笑えるようになったね...)



初めて彼に会った時は笑うことを忘れたように酷くやつれていた。



あの時からすると大分表情は柔らかくなったし、こうやって不器用ながらに笑えている。



その姿にほっとしながら、ルミアはユウを引き連れて次の授業の場所にむかって歩き出した。