そんなこんなで、早々に出所できることになったアネルマは監獄から出た後、これからのことをぼんやりと考えていた。



 まさかこんなに早く出てこれると思ってなかったし、それだけの罪を自分は犯したと自覚していたから。



 父の事は心配だが、死刑になる心配はないと言われている。



 なにより



(あの人がいるから、安心ね...)



 定期的にグロルの元にやって来ては、笑顔と元気を振りまいていくリラ。



 彼女のおかげで、最近ではグロルの顔にも不器用な笑顔が戻り始めている。



 それはアネルマが今まで見たことがないもので、



 実際に目にしたアネルマは、心の底から驚いたことものだ。



(あんな笑顔、私やお母様には一度だって見せたことなかった...)



 それだけ、リラという女性がグロルの中で大切な存在なのだろう。



 そんな彼女がグロルの傍にいてくれる。



 だからきっとあの人は大丈夫。





 母親は随分前に亡くなった。



 だから気にすることは何もない。



(...私は、どうしようかしら...)



 もうこの国には居ずらい。



 一人国を出て、旅でもしようかしら。



 そんな事を考えてる最中の辞令。しかも国王じきじきの。



 もちろん断れるわけもなく。



 意図は全く分からないが、やるしかない。






 と言うわけで、休む間もなく働き始めたのは良いが、初っ端からこのため息の連発である。



 イライラしないほうがおかしい。



「まったく、拷問だわ。いっそのこと国から叩き出してくれた方がいいのに、何で私が、よりにもよって貴方の補佐官なのよ」



 シェイラの机の上に溜まりに溜まった書類の数々を手早くまとめながら愚痴をこぼず。



「しょうがないだろう、もう決まったことなんだから...それよりも、...はああぁ...」



「十・九・回・目!!もう溜息やめて、こっちまで不幸になる!!」



 仕事に埋もれて机に突っ伏しため息をつくシェイラに、遠慮なく怒鳴り声を浴びせるアネルマ。



 婚約をしていた頃の上品な雰囲気とは打って変わったサバサバとした様子の彼女を、シェイラは机に突っ伏したまま片頬をつけて見上げる。



「...アネルマって結構辛口なんだな」



「だまれ、仕事しろ!!」



 溜まったイライラを発散するかの如く、容赦なく声を荒げるアネルマなのだった。