その場にいた全視線が二人に集まる中


最も動揺し、取り乱していたのは、他でもないネロ本人だった。



「~〜〜ッ、んんンーー!!!????」


無事な方の腕でアポロを叩き、足で暴れまくる。


「っぶは、お前ッ!!!??何考え…!」

「もう、うっさいなぁ」


怒るネロにうんざりとした様子のアポロは、治療が先に終わったルトの腹から腕を取り出す。


「あとの処置よろしく」


「は、はいっ!!」


「おいっ、話聞いてんのか…!!!」


「はいはい、聞いてるよバカ、ちょっと落ち着こうね」



不気味なくらいニッコリ笑ったアポロは、今度はフリーになった両腕でネロの腕を抑え、マウントポジションをとると、


「お前が悪いんだよ、暴れるからさ」

「お、おい…!?」


ああ、これだから嫌なんだ


ネロは心の中で何度も後悔する。


相棒としてのアポロはいい、だが医者としてのアポロは他人特に患者に有無を言わせぬ何かがある。


それは一種の恐怖であり、ネロがアポロの治療を嫌がる理由。


「ラストだから、我慢」

「ちょ、待っ…」


「待たない」


再び落ちてくる唇。


ネロの口の中に広がる血の味。


(もう、やだ…)


青ざめるネロは後悔と同時に、二度とトリシューラの牙は受けないと固く心に違うのだった。