だ、誰?誰でもいいから助けて。私は恐怖で頭がいっばいいっぱいだった。だから勇気を振り絞って口を開いた。

「た、助けて…」

口にした瞬間抑えていたものが込みあげて溢れた。体の震えは未だに止まらない。むしろ増すばかり。どうにかしてこの場を乗り切りたかった。藁にもすがる思いってこういう事なんだろうか。

「何してんだつってんだよ。」

「あ?こいつがいきなりぶつかってきて謝りもしないで泣いてんだよ。しかもそのせいで俺の服汚れたからクリーニング代払ってもらうって話してんだよ。な?」

私に話振らないでほしい。ちゃんと謝ったし。てか泣いてないし。これは…そう目にゴミが入ったんだ。

「嘘だな。」

「あ?」

「俺が来た時その娘泣いてなかったし。5万とかあんまっしょ。つかそもそも汚れたってそんな変わんねぇだろ。」

「チッ怪我したくなかったら帰んな。お坊ちゃん。」

「その言葉そっくりそのまま返すけど?」

「あ?」

この人…あ?しか言えないの?もっとあるじゃん。ボキャブラリーなさすぎでしょ。私でも3つくらいは言えるよ?言わないけど…