「あ”~・・・のどが痛い」


「久しぶりにカラオケ行ったもんな~」


次の日の朝。

私と春はまた二人で登校している。


「・・・そういえばさ、昨日会ったっていう男。どんな奴だったよ?」


「え・・・」


私が昨日会った外国人の彼とは、あの後メールでも話さなかった。

昨日はお兄ちゃんの宿題の手伝いをしてたんだ・・・(留年して今同じ学年(汗))


「えとね・・・昨日離したように、すごく背が高くてイケメン。テノールボイスだけど聞き取りやすい優しい声だったな・・・」


「へ、へえ・・・」


春がなんだか苦い顔をしているように見える。

夜更かししたから目が疲れてるし、ちょっとまだ寝ぼけてるかも・・・


「あれ。昨日登校してる時にあんな奴見たっけ?」


「え?」


春の何だか焦った物言いに、私も春の指さす方向を見る。

信号で止まっているその人は、どうやら上級生らしかった。


大人びた雰囲気に、高い身長。

サラサラな髪の毛からイケメンを想像する。


「ああ~。俺もあのくらいの身長欲しいぜ・・・」


「春は頑張ったって無理。あの人だって、上級生の中でも上の方でしょ・・・」


上級生でも、イケメンなら狙いたい!


そう思って彼の隣までおずおずと進み出る。


彼は私とは反対方向に持っている鞄の中身をあさっていた。

顔が良く見えないのでもう少し近づこうとしたが・・・


「信号。青だぞ」


「あ、うん」


私は春にグイッと腕を引かれて、慌てて小走りになる。


「イケメン探しもほどほどにしないと、見つける前にばあさんになるか、交通事故起こすぞ」


「おばあさんになる前には誰かと結婚するし」


「イケメンじゃなくても?」


「なくても」


春はそれを聞くと、ふうんと言って手を放し少し前を歩く。


「あ・・・」


上級生の顔を見忘れてる。


イケメン探しはほどほどにしますが、近くにいるのだから問題なし。


春の隣に並ぶように普通に見せて、ちらりと後ろを振り返る。


彼の顔は、まだ鞄に向かっていて見えなかった。


「・・・残念」


「今日は諦めて、俺と競争しようぜ」


春はそう言って、だっと走り出した。


「あ、卑怯だ!!」


「早い者勝ち~♪」


「それとこれは違ーう!!」


私も春を追いかけるようにして走り出した。


「・・・元気いいな~」


後ろの上級生の呟きは、私たちには届かなかった。