「おはよ!」


「加奈~! 一緒のクラスで、わたしゃもう嬉しくて嬉しくて涙が・・・」


「演技臭いの嫌い」


「すみません」


2組になった私がその教室へ向かうと、中学の頃から仲良しの宮下加奈に会った。

メガネをかけていてクールでかっこよく、秀才で美人の加奈は私のあこがれだ。


「今日は春くん、一緒じゃないの?」


「身長の事でからかったからなんかされる前に逃げてきた」


「どや顔するなよもう・・・」


そう言ってくすくす笑う加奈は、少しだけ男口調が出てきてやっぱりかっこいい。


「追いついた!」


「げっ」


バン、という音とともに私は肩を叩かれた。

恐る恐る見上げると、息を荒げてこちらをいじわるぅく見つめる春がいた。


「お、おはよーございまーす♪」


「さっき言ったし」


「おはよう、春くん」


「あ・・・おはよう」


私の正面にいる加奈に気づいた春は、慌てて挨拶を返した。


「今度俺の身長について何か言ったら、もう勉強教えてやらんからな!」


「加奈に教えてもらうからいいし!」


「頼られるのは嬉しいけど、私教え方下手だから春くんの方がいいよ」


『そんなことないよ!』


私と春の声が重なった。

加奈はちょっとびっくりしたようで固まったけれど、すぐにプッと吹きだした。


「笑うことないし・・・」


「ごめ・・・やっぱり二人仲いいな・・・羨ましい」


加奈はそう言って少し悲しそうな、不思議な笑みを浮かべた。


「・・・なぁ、今日って授業あんの?」


「ん? ないけど・・・なんで?」


「俺さ、今日放課後知り合いに呼び出されてんだけど、授業があんならサボりたいし断ろうかなって・・・」


「こいつは・・・なんで授業に出なくても秀才なんだあっ!」


こいつ前田春も、加奈には敵わずとも劣らず頭がいいのだ。