「千音って…料理上手いんだね。」


「何ですか、その『うわ、意外』みたいなカオ。」


もう私機嫌損ねた。もう嫌だ。


「千音~怒んないで。」


「……」


「千音…襲って良い?」


「すぐそういう事言う!いい加減にしてください!」


そう言えば私が口を開くと知っているかのようなその顔がムカつく。


「冗談だって。風呂、入ってきな。」


渡されたタオルをふんだくって、風呂場に向かう。


「先生のバカ…」


私の気持ちを知らないから、先生はそんな簡単に『襲う』なんて言えるんだよ。


「ほんと…バカ…」


今度は先生に向かってじゃない。


私のバカな心臓に向かって、だ。


(まだドクドクいってる…)


結局、お風呂を出るまで、心臓は鳴りっぱなしだった。