「ところで先生…」


ずっと気になっていた事が一つある。


「ん?」


「舞さんって、誰なんですか?」


「ごほっ…」


口に含んでいたお茶をふきだしそうになっていた。


「何で…知ってんのさ…。俺言ったっけ?」


「いや、まぁちょっとですね、色々ありまして。」


盗み聞きですって言っても良かったかな。


「はぁ…。特に何でもないよ。舞とは。2年前に卒業したやつってだけ。」


「何でもないのに先生、舞さんに興味あったんですか?」


「千音、お前さては聞いてたろ。」


「何のことだかです。素直に白状してください。」


メガネをくいっと押し上げて、こっちに向き直る。


「ほんとに何もない。そもそも、俺はあいつに好きだなんて言った覚えないしな。」


心底呆れたような顔を見せてくる。


「全部…舞さんの嘘って事ですか?」


「だろうな。大方、千音がいるって気づいてたんじゃないのか?昔から勘だけは鋭かったし。」


怖い。先生の周りにいる女の人って皆怖いんだよな…。