「もう…ほんとしょうがないな…。」


舞さんの甘ったるい声がして、ふっと振り返ってみると、そこには彼女がいた。


「あ…。」


あまりに予想してなかった出来事だったから、声が出なかった。


それだけじゃない。私が、先生が舞さんに興味があったって事を知ってしまったから。


「あら、こんにちは。もしかしてさっきの話聞こえてた?」


「いいえ…」


とっさに首を横に振る。


「そう。なら良かった。あなたも光希さんの事が好きなのかと思ったからつい。ごめんなさいね。」


「別に…どうって事ないですから。大丈夫ですよ。」


さっきは髪しか見えなかったけど、近くで見てみると舞さんはとても可愛い。


くりっとした二重の目に、少し赤らんだ頬。それにぷっくりとした唇。


少女マンガか何かに出てくるんじゃないだろうかっていうほどのルックスに、さらに気分が落ちていく。


(こんな人に…勝てるわけないよ…)