「いいんですか?」


耳を疑った。ずっとダメだと思ってたものが、急に裏返されたから。


「いいんじゃない?参考になるか分かんないけど、私の話、聞きたい?」


もちろんです。


「はい。お願いします。」


先生がこの場にいなくて良かった。


「私、今看護士してるんだけどね。旦那さんが私の働いてる病院の医者なの。」


「職場結婚ってやつですか?」


私のとはまた違うような…。


幸香ちゃんを優しく撫でながら続ける。


「そうそう。でも、その人の事が好きな人がまた別にいてさ。付き合ってたわけじゃ無かったらしいんだけど、今でもすれ違いざまに睨まれたりするんだ。」


予想以上に重い話だなって思ったけど、その相手の人の事を考えるとわからなくも無い。


「自分の好きな人を横から掻っ攫っていくなんて最低だよね。でも…」


「でも?」


希望さんの目に強い光が宿っている。


「私の方がずっとその人より拓斗(たくと)さんの事好きな自信があった。」


拓斗さんは、今の旦那さんの事なんだろう。


「だから、勇気出して告白した。要は何が言いたかったって言うと、後悔する前に行動した方が良いよって事。」