「拓海、お前今年はさくら見に行かないのか?明日か明後日かにこの辺り大雨降るらしいから、早く行かないと散っちゃうぞ」
朝父さんからそう言われたことをそのままみんなに伝えた。
「まじかー。私お姉ちゃんと買い物行くから今日はむりー」
「俺も今日部活再登校だー」
「俺今日畑の手伝いしろって言われてるー」
「今年はみんなで丘の下から見るだけにするかー」
「そうだね…」
ということで、今日の帰り丘の下からさくらを見ることになった。
「北川くーん」
廊下から俺を呼ぶ声が聞こえた。
誰だ?
あ、品川だ。
「ほらほら拓海くん、めんどくせって気持ちが顔に出ちゃってますよ」
「だってほんとにそうだしさ」
そのとき真子が俯きながらみなみの後ろに隠れた。
まるで品川から見えないようにするように。
「真子、あいつ苦手なの?」
「え、な、なんで?」
「いや、今みなみの後ろに隠れたじゃん」
「あ、あーなんかさ、喋ったことないから苦手も何もないんだけど、ああいうきつそうな子と絡むとめんどくさそうだなって思って」
「あーだよなー。俺も絡みたくねえわー」
「ねえ北川くんはやくー」
品川が急かしてくる。
あーもうほんとにめんどくせえ。
「なんだよ」
「ねえねえ、並木丘のさくらって綺麗なの?」
「あーまあな」
「私まだ見たことないんだー。今度一緒に見に行こうよー」
ほんとにこいつ頭おかしいのか?
昨日初めて喋った奴とさくらなんか見に行くか?普通。
ほんとに俺狙われてんのかな…。
「ダメだよそれはー」
いきなり優生が会話に入ってきた。
「明日大雨降るから今日中に見に行かないとだめなんだよな?拓海」
「あ、うん」
「じゃあ今日の帰り行こうよ!」
「今日の帰りは俺らと行くからだめー。しかもそのメンバーの中に拓海の大切な人もいるからなー」
「お、おい優生…」
「他の女の子とは行けないんだよ。だからその話諦めてくんない?」
そう言うと優生は品川の返事を待たずに俺を教室に連れ戻した。